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2022-06-13

少額課金は少額商品には使えない矛盾

「ネットは新聞を殺すのかblog:少額課金」から、かつて研究(と言うほどでもないですが)した少々の経験を書いておきます。とっちらかっておりますが、自分用メモなので勘弁して下さい。

少額課金は少額商品には使えないという矛盾

コンテンツビジネスマネジメントいわゆる少額課金 (Micro Payment) は集金コスト、システムコストがかかりすぎて採用できません。10円のコンテンツの”料金回収”に6円くらいかかる感覚です。プラス、固定費や初期費用も必要です。これではいったい誰のために働いているのかわかりません。

しかも、現状では少額課金事業者は課金と回収を担うだけで、販売には関わろうとしません。コンテンツプロバイダーは販売のための営業経費(サイト運営など)も必要なわけで、このモデルでは利益は望めないということになります。

新聞の例ですと、1紙=100円としてだいたい500記事が掲載されています。単純に言えば1記事=20銭ですが、大小あるので1記事=1円だとしましょう。はたして普通の人が1日に何記事読むでしょうか。一面(トップ)を隅々まで読んでも5~6記事です。平均したらせいぜい10記事で10円ですね。こんなもんチマチマ売っても利益になりません。


ネットの定額式課金はビジネスを小さくするから無理


別の方法として「慶應義塾大学千原啓さんの卒論」にあるような「定額式」がありますが、こちらにも問題があります。定額式の「定額」が低すぎるのです。一般には数百円~5,000円くらいまで幅が考えられますが、どう考えても千円を超えたあたりで会員数が激減すると思われるのです。仮に月額1,000円とすると100万人集めても1カ月10億円、年間120億円のビジネスにしかなりません。120億円では記者は数十人しか雇えませんから、記事も書けないわけです。

全国紙の新聞社のビジネスは年間1千億円単位です。全国紙の新聞社が地方紙なみのビジネス規模に甘んじ、地方紙は消滅するくらいの劇的な産業変化です。

定額式超流通には通信社しか乗れない

「定額式超流通」では「複製にほとんどコストがかからないのだから、料金システムは定額式にすることができる」(「定額式超流通の提案」、永井俊哉)と言います。確かにインタートラスト InterTrust Technologiesが提唱したような、「誰かがどこかで閲覧するたび、勝手にお金が転がり込んでくる」素敵な仕組みが社会に広まればおもしろいとは思います。

ただし、その仕組みに乗りうるのは少数の通信社とコラム単位に売れる高級論評紙だけではないでしょうか。多くの地方紙や生活情報が多い全国紙はやはり「まとめてナンボ」なのです。読むか読まないか分からん上に、現物も手元に残らないとなれば、月々払える額は小さくならざるを得ないと思うのです。


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10:41 午前 in Weblogs | Permalink | Translation powered by SYSTRAN

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湯川さんのもう一個のblog(「ネットは新聞を殺すのか」)をぼけ〜っと見ていたら桂敬一さんの名前が出ていてちょっと思ったこと.. 桂敬一さんっていうとなんとなく思い出すのが「3S」って言葉のインパクトで.. 「3S」っていうのは、「Sex, Sports, Stock」ってことで... [続きを読む]

日時 2022-06-15 09:10 午前

コメント

はじめまして
そして、いきなりですが・・

このエントリーは参考になりました
じゃあ、お礼にこれでも・・↓(ご存知かもしれないけど)

「マイクロペイメントへの反論」
http://www.blog.net/micropayments-j.htm

たぶん、國領二郎さんとこのゼミの人がまとめたレジュメです


あと、ちょっと思うのですが
i-tunesとかAOLのVODってどうやってやってるんですかね?

やっぱ「規模の経済性」って感じで、最初の基盤が安定しててそこから「インフラ使えば使うだけ元がとれるんだよ~」って感じなんでしょうかねぇ..?

(もしくは、採算取れなくてもいいのかな...つっても、i-tunesはとってる感じだしなぁ...)

Posted by: m_um_u at 2022-06-15 07:24 午前

m_um_uさん、こんにちは。

参考文献ありがとうございます。2000年からなんにも進歩してないんですね。

iTunes は4月末で7,000万曲販売したらしいですが、1曲1ドルとすると7,000万ドル。うちAppleの取り分は数セント/曲。多くて合計数百万ドルです。↓この記事によれば赤字だそうですし。
http://www.itmedia.co.jp/news/0310/17/ne00_itunes.html

あれほど話題を呼び、大々的に宣伝し、誰もが知っている成功したサービスでさえ、単体で見れば数億円の事業でしかありません。なんと効率の悪いことか。

Posted by: IdealBreak at 2022-06-15 11:30 午前

なるほどぉ・・参考になります

ってことは、「ソフトはほぼ無料でそれを引きにして、ハード(ipod)で稼ぐ」、って感じか..
(なんか、これまでと逆のモデルですね)

でも、それが成功しているとしたら、「基本的に無料」っていう情報財の性格を利用したビジネスモデルとしておもしろいかも・・って感じですが

・・びみょーですねw

Posted by: m_um_u at 2022-06-16 06:13 午前

「梅田望夫・英語で読むITトレンド」に「『オンラインミュージックは儲からない』と競合を牽制するスティーブ・ジョブズ」という記事が載りました。
http://blog.japan.cnet.com/umeda/archives/001330.html

牽制でもあり、正直な意見でもあると思います。iPod があってこその iTunes ストアなんですね。

Posted by: IdealBreak at 2022-06-22 02:22 午後

これ系だとやはり気になるのはソニーです

ソニーって、モロにipod-itunes型の「ハード/ソフトシナジー」でいこうとしてますもんね

で、それ関連で小林雅一さんがなんか書いておられました(「iTunes Music Storeの日本進出を待ち受けるレコード業界」@赤門ジャーナル)
http://www.gbrc.jp/GBRC.files/journal/amr/

やはりitunesはハード普及のための媒体(だからハードメーカーじゃないとキツイ)って感じで・・
関連でソニーの話が出てくるんだけど..

ちょっと面白いのが、ソニー・グループ側とSME(Sony Music Entertainment)の意思統一が十分じゃない感じなところで..

小林さんがそれ系のビジネスモデルについてSMEに問い合わせたみたいなんですが、「当社ではそういう次世代モデルについては検討しておりません」的な回答がかえってきた、と
(まぁ、手の内明かすわけにも行かないのでしょうが..)

あと、日本の音楽業界全体としてはソニーのやり方にビクついているようです(でも、ソニーがやっちゃうとそれが標準になって、ビジネスモデルも変わっちゃうんでしょうね)

Posted by: m_um_u at 2022-06-23 07:05 午前

m_um_uさん、こんにちは。

ソニーを始め、国内電器メーカーはそれぞれが音楽関連会社を持っているので、かえって難しくしているかも知れません。「自社=音楽会社=競合社」で三すくみになっているかも。

最近のソニーでは、Walkman陣営とVAIO陣営が喧嘩してるみたいなのも首をかしげます。そりゃあ、どう喧嘩しようと、規格競争しようと、いずれはソニー、パナソニックが勝つんだろうけど。

ボクらとしてはソニーにはもっと「世界のソニー」であって欲しいんだけどね。

Posted by: IdealBreak at 2022-06-23 11:19 午前

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